昨秋の宮崎合宿に呼ばれた捕手4人のうち、WBCに選ばれたのは3人だけ。落選した1人の無念を背負い、残された同志たちはマスクをかぶる。阪神を2度の優勝に導いた扇の要が、その胸中を明かした。
 発売中のNumber1139号に掲載の[捕手枠争いの結末]坂本誠志郎「3/4の重みを噛みしめて」より内容を一部抜粋してお届けします。

侍ジャパン選出「なんかゾワっとしたんです」

 それは寒気にも似た感覚だった。

 1月中旬の某日。スマートフォンが鳴った。耳から脳に吉報が伝達される間、坂本誠志郎は身震いする自分をありのまま受け入れた。

「なんかゾワッとしたんです。一気に背中から……。怖さを感じたのだと思います。『やった! 選ばれた!』みたいな無邪気な喜びは一切ありませんでした」

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 阪神を2年ぶりのセ・リーグ優勝に導いた直後の昨年10月、プロ10年目にして初めて侍ジャパントップチームから声がかかった。11月の宮崎強化合宿、東京ドームでの韓国2連戦を終えた頃にはもう、WBC捕手枠争いの上位につけていた。

 テレビ番組や壇上、会見では事あるごとに「世界一になりたい」と前のめりな言葉を発信した。一方で、胸の奥底でうごめく本心にも実は薄々気づいていた。

「ずっと『なんなんやろ、この気持ち』と違和感を抱えていたんですけど、山川さんのコメントを見て、『あっ自分の本音はこれだったのかも』と理解しました」

日の丸を背負うことの怖さ

 ソフトバンク主砲の山川穂高は昨年12月、契約更改後の会見中にWBCへの本音をさらけ出していた。

「出るのは怖いです」

 共感した。しばらくして、そんな自分はおこがましかったのだと自戒した。

「山川さんはWBCに出たことがあるから、日の丸を背負う本当の怖さを知っている。でも僕はまだ何も知りませんからね。それに、もし仮に選ばれていなかったら、絶対に悔しくて仕方がなかったはずなので……」

 4カ月前、宮崎強化合宿に集結した捕手は4人いた。WBCの捕手枠は3人。底抜けに明るいムードメーカー、巨人・岸田行倫がメンバーから脱落した。

「きっしゃんのことは今でも考えます。WBCではきっしゃんと一緒に戦っている感覚になるかもしれません。11月は韓国戦でマスクをかぶったきっしゃんの意見も聞かせてもらった。あのときの4人が感じたものを一つにして3月は戦うわけですから。偉そうに軽はずみなことは言えないけれど、自分にとっては初めて代表トップチームで一緒に戦った仲間。僕個人としては、少なからずそんな感覚を持っています」

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