2017年WBCと巨人でともに戦った元スコアラーの志田宗大氏が語る“菅野の凄み”

 存在感が、再び増している。第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、1次ラウンドを4戦全勝で突破した野球日本代表「侍ジャパン」。最年長36歳の菅野智之投手は8日の豪州戦に先発し、4回無失点で磐石のマウンドを見せた。2017年大会以来、2大会ぶりに出場して投手陣をけん引。2017年のWBCでスコアラーとしてともに戦い、巨人スコアラー時代に復活を見守った志田宗大氏は、ベテラン右腕の凄さと復活の背景を語る。

「2017年のWBCは菅野投手がエース格でした。私は当時ヤクルトのスコアラーで、菅野投手とは初めて同じチームでやりましたけど、しっかりしていると感じたのが自己管理。体のケアや食事、準備にかける時間の長さや質は、他の選手と比べて群を抜いていましたね」

 ヤクルトで9年間プレーした志田氏は、2010年に現役を引退。翌2011年からヤクルト、巨人でスコアラーを務めた。昨年は中日でゲーム戦略アナリスト兼コーディネーターを担当。現在は、スポーツのデータ分析などを行うライブリッツ株式会社に勤務している。2018年から7年間は巨人で菅野と同じ時間を過ごし、野球に取り組む姿勢に驚かされることがあったという。

 志田氏が巨人に移籍した2018年のバッテリーミーティング。「菅野投手は事前に対戦打者の分析をしてきていました。ミーティング前に『僕はこうやって抑える』とノートに配球を書いて持ってくるんですよ。当時、そういう先発投手は菅野投手ぐらいでした」。選手の多くは、スコアラーから相手投手や打者の傾向をミーティングで伝えられて、対策を練っていたのである。

 菅野の場合は予習してきており「1~9番まで打順を予想して、攻め方を書いてきていました。違和感があれば『僕はこう思うんですけど』と質問する。そういう準備をしていました」と振り返る。その姿勢はチームに浸透し、他の投手や捕手もミーティング前の予習がルーティンとなったそうで「凄くいい習慣を菅野投手が作っていったと感じました」と説明した。

 菅野は2017年に17勝を挙げるなど巨人のエースに君臨。14勝を挙げて3度目の最多勝を獲得した2020年オフにメジャー移籍を目指したが、契約に至らず残留すると、31歳となっていた2021年以降は不振に陥った。

 2021年は入団以来ワーストの6勝止まり。2022年は10勝と持ち直したものの、防御率3.12と本来の姿からは程遠い内容だった。2023年も自己ワーストの4勝と低迷。志田氏は当時を「直球の質が少し落ちていました。元々、スライダー系の球が得意でしたけど、あの頃はスライダー系に偏った投球になっていたのは事実です」と不振の原因を分析した。

 30代半ばに差し掛かり、年齢的な衰えが否めない時期。それでも久保康生巡回投手コーチらと復調に向けて懸命に取り組み「直球という一番大切なところの質を取り戻した」と復活の足がかりをつかんだという。

研究重ねる姿「テクノロジーも使いつつ、取り組んでいたのは印象的でした」

 さらに大きかったのがフォークの完全習得。それまでもフォークは投げていたものの「縦の変化球は少し苦手なようでした」と回顧する。「自分の得意な球種を磨こうとする投手が多い中、菅野投手はフォークボールの研究に余念がありませんでした。握り方も、どうしたら落ちるのかを考え、落ちる原理も研究していたんです」。

 トラッキングデータを計測する機器を使い、回転軸や回転数などを自力でチェック。どのような数値になれば効果的に落ちるようになるかを研究し続けた。「自分の感覚だけじゃなく、テクノロジーも使いつつ、取り組んでいたのは印象的でした」。その結果、鋭く大きく落ちる進化したフォークを習得。志田氏が「あれは大きかった。投球の幅がグンと広がりましたね」と解説したように、2024年は15勝を挙げて4度目の最多勝を獲得するなど完全復活を果たした。

「キャリアの終盤に差し掛かって、こういうふうにパフォーマンスを上げるケースは、あまり例がありません。とても素晴らしかったです。成績が落ちていた時期も、菅野投手は自己管理や事前の準備が全く変わりませんでした。むしろ質が上がっていました。ベテランの域に入って、あれだけの状態に戻せたのは、そういう一面もあったからだと思います」

 同年オフにFA宣言してオリオールズに移籍。念願のメジャー挑戦となった2025年は10勝をマークした。同年オフにFAとなり、移籍先が決まらないままWBC侍ジャパンのメンバー入り。2月にロッキーズと契約に合意し、春季キャンプを経て侍ジャパンに合流して最年長投手としてチームを引っ張っている。

「相手のデータをチェックして、弱点を把握して臨むので、安心して見ることが多いですね」。メジャーリーグを経験して、投球はさらに進化している。2度目の連覇を狙う侍ジャパンにとって、頼もしい存在であることは確かだ。

⚪志田宗大(しだ・むねひろ)
ヤクルトの外野手として9年間活躍した後、2011年からヤクルトで、2018年からは巨人でスコアラーを歴任。2017年のWBCでは、侍ジャパン(日本代表)のスコアラーとして選手たちの活躍をデータ面から支えた「分析のスペシャリスト」。2026年にライブリッツ株式会社に入社。過去の経験を活かし、データを元に野球指導を行う「FastBall」を担当。

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