今季、ソフトバンクから戦力外通告を言い渡された風間球打(22歳)と田浦文丸(26歳)。トライアウトに臨んだ2人に現地記者が聞いた、現役時代の苦悩とは。【全2回の2回目/第1回も公開中】

 8年間ユニフォームを着たソフトバンクから戦力外を言い渡された田浦文丸は当初、トライアウトを受験することに消極的だった。

「現役を続けたいか、区切りをつけるか。気持ちは半々です」

 番記者は球団事務所から出てくるところで待つ。筆者もその1人だったのだが、毎年この取材が一番つらい仕事だ。

戦力外当日、ぼそぼそと小声で…「半々です」

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 田浦はどちらかと言えば無口タイプだ。それに通達直後のショックもあっただろう。取材の応答もいつも以上にぼそぼそと小声だった。

 26歳という年齢を考えれば、まだやれる自信もあるのではないかと水を向けたが、

「半々です」

 と短く返すだけ。

 質問に困った記者たちと田浦とのあいだで気まずい沈黙が流れる。

 田浦といえば何か。それはとりわけ、チェンジアップである。その球を武器にプロの世界に飛び込み、2023年シーズンには45試合に登板するなど一軍の舞台でも輝いたのではなかろうか。チェンジアップについて語るならば、ちょっと饒舌になるかもしれないと気を引こうとした。

 だが、田浦は俯き加減のまま、こう答えた。

「僕の中では全然通用しないボールでした」

 まさか、の言葉だった。

 田浦のあのチェンジアップが通用しなかったというのか。あれは紛れもなく「魔球」だったはずだ。

「なんだ、今のは?」世界に衝撃の“魔球”

 身長168cmの小柄な左腕が“世界”を驚かせたのは今から8年前の夏のことだった。

 高校生の侍ジャパン戦士たちがカナダで臨んだ「2017 WBSC U-18ワールドカップ」。当時秀岳館高校(熊本)の3年生だった田浦が、驚異の奪三振ショーを見せたのだ。

 主にリリーフとして6試合に登板。13回2/3の投球回で29奪三振を記録したのである。日本代表はこの大会で3位。代表メンバーには小園海斗(現広島)や清宮幸太郎(現日本ハム)、清水達也(現中日)、藤原恭大(現ロッテ)も名を連ねていた中、田浦だけがチームから唯一大会ベストナインに選ばれた。

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