ソフトバンクが阪神を4勝1敗で撃破した今年の日本シリーズ。第5戦では、レギュラーシーズンで50試合連続無失点の記録を打ち立てた石井大智が柳田悠岐に同点2ランを被弾する衝撃的なシーンが生まれた。「こういう試合だからこそ、負けたらアカンのよ」。テレビの中継で解説を務めた岡田彰布前監督は、阪神の敗戦をどう見たのか。(全2回の2回目/前編へ)※文中敬称略

 野球関係者は「流れ」といういかにも抽象的な言葉をよく使う。目には見えないが、流れは間違いなく存在する――球界に身を置く人間はそう信じて疑わない。今回の日本シリーズでは、それがモロに出た。3戦目以降、阪神は必死に向かっていったが、2戦目で変わった流れによって「たった1点の壁」に泣くことになった。3戦目に続き、4戦目も1点差負け。ソフトバンクは蘇った山川穂高のバットで確実に勝ちをとっていく。

 ソフトバンクが日本一に王手をかけて迎えた第5戦もまた、阪神にとって信じられぬ事態になった。早く自分たちのペースで、自分たちの形で出直したい。それにはもってこいの展開だった。何とか2点を先制し、あとは強力リリーフ陣で逃げ切るだけ。先発で好投した大竹耕太郎から型通りに及川雅貴につなぐ。7回2死一、二塁。及川は気迫の投球で近藤健介を見逃し三振に仕留め、ピンチを切り抜けた。

 そして石井大智のマウンドである。レギュラーシーズンで50試合連続無失点。「点を取られない投手」がそこに立つ。あと2イニング。ここを締めれば、また流れを引き戻せる。しかし、テレビ中継の解説席に座っていた岡田彰布には、気になるところがあった。

 それは捕手・坂本誠志郎の考え方だった。岡田はこの1年、坂本の仕事を絶賛してきた。昔から野球界にはこんな格言のようなものがある。「困った時の外角低め」――これは野村克也が常に口にしていたもので、ピンチで打者と対峙する場合、ウイニングショットは外角低めのストレート。ここに投げ切ることができれば、窮地を脱することができる、というものだ。

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