情報だけがひとり歩きしているようだった。
西武のエース・今井達也が加速するメジャー移籍報道にストップをかけたのは今季の本拠地最終登板を終えた後のことだった。9月28日にスポニチが報じたところによると「メジャーへの希望を話したことがない」という旨を本人が告白したという。その事実に驚いた人も少なくないのではないか。
そもそも、今井のメジャー人気が高騰したのはある事情からである。5月初旬ごろのことだ。たまたまスタジアムのトイレで居合わせたベテランのメジャースカウトがこんな話をしたのだった。
「みんな村上と岡本が目的なんだけどね、2人とも戦線離脱した。そこで今井を見ておこうかという話になったんだよね」
メジャーリーグのスカウトは複数球団が日本に常駐している。メディアによく出るところではドジャースやカージナルス、ブルージェイズやシンシナティレッズ、ジャイアンツ、マリナーズなどがあげられる。
ただ、彼らの視察は情報収集にほかならない。FAやポスティングが噂される選手を早くからチェックしておく。そして、時が来たときにレポートを提出する。いい選手は上層部が視察するが、世間では評判が上がってもそこまでの選手ではない時は視察を断るケースもあるという。その「ここ」という時はおおよそ決まっていて、球団の上層部がアジアを回るタイミングだ。5月のそれはまさにそのタイミングで目標物を失ったメジャー球団上層部は今井の視察に訪れたというわけである。
これまではノーマークだった西武ライオンズの「48」はさぞ輝いてみえたに違いない。ちょうど西武のチーム状況も良かった。日本にはまだこんな優れた投手がいたのか。そうした評価がアメリカ国内での評判を高め、ポスティング候補という話が勝手に出たであろう。本人 の意思とは裏腹に。
メジャーに挑戦したい選手の気持ちはそれぞれだ。昨年もそうした記事を書いたが、意思の表明の仕方も異なる。今井のチームメイト、高橋光成はFAが近づくにつれてそれを口にしてきたし、平良海馬に至っては1軍に定着したすぐに目標としていることをすでに公言している。
一方の今井はどちらの意思表示を示さないタイプだ。興味はあるんだろうなというのは想像の範囲内で、その興味も、声がかかるから行きたいのか、声がかからなくてもいきたいのか、それだけでも異なるが、そのどちらかさえも知る人はいない。「興味がない」という意思表示をしていれば報道も変わっただろうが、今井の姿勢が全く見えなかっから勝手な想像をされてしまったのが、そうした報道につながったのは間違いない。
応援するファンとしては気がかりであることは間違いなく、我々メディアとしても報道の対象になる事柄である。
ただ、この問題は非常にデリケートな話である。本来は球団と本人の意思決定というものを尊重しなければいけない。挑戦しようという選手を批判すること、挑戦を拒む球団のことも、悪くいうこともあってはならない。
我々が考えるべきは、どのようなタイミングでメジャーに行くことが選手や球団にとって最善なのだろうかという議論なのかもしれない。
ポスティングを認めるかどうかは球団の権利である。チーム事情が苦しいのに、安易に認めてしまっていたら、チームビルディングは立ち行かなくなる。球団はそれを第一に考えるの至極当然のことだろう。しかし、言い方は悪いが「売り時」も存在する。海外FA権を取得しての移籍だとメジャーの場合は恩恵を受けることはできない。ならば、ポスティングでお金が入るのであれば、その機会を逃さない手はない。西武のような、球団に掛けられているバジェットが多くない球団ならば、そちらを選択した方がいいというのは真っ当な考えである。
選手個々の夢を尊重した上でどのタイミングでメジャー移籍を実現させるべきなのだろうか。私は
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