日本ハムCBO 栗山英樹氏 ホタルに学ぶ備え、変化の大切さ 先を見据え策を持ち適応――野球も同じ

栗山英樹氏の色紙「狡兎は三窟あり」」

 侍ジャパン前監督で日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=64)による連載「自然からのたより」は、北海道栗山町の森に舞うヘイケボタルからの学びについて。例年より長い期間、ホタルを観賞できたこの夏。それは同じホタルが舞っていたのではなく、羽化の時期を少しずつずらして成虫になっていたから。種を守るための備えであり、人もまた自然環境の変化に先を見て準備し、対応していかなければならないと教えてくれる。

 この夏は自宅のある栗山町の沢でかなり長い間、ホタルを観賞できた。例年は7月末からなのに、7月初旬から舞い始めて8月のお盆の頃まで。これも異常な暑さが関係しているのかと、夏の夜を美しく彩るホタルを見て考えさせられた。

 北海道に棲息するのはヘイケボタル。ゲンジボタルより小さくて生態も異なる。栗山町に住む「自然博士」によると、短い期間に一斉に飛び交うゲンジボタルと違い、ヘイケボタルは長い期間見ることができる。水の温度で羽化の時期を変えて徐々に成虫になっていくから。だから同じホタルを見ているのではなく、別のホタルを見ているのだ。それは種を守るためで、たとえ大雨で羽化間近の蛹(さなぎ)が流されても残った蛹が羽化し、交尾して卵を残す。そんな戦略があって長く観賞できる。そしてヘイケボタルはさまざまな状況に備え、自然環境へ着実に適応している。

 狡兎(こうと)は 三窟(さんくつ)あり

 これは、中国の歴史書「戦国策」にある言葉で、ずる賢い兎(狡兎)は三つの隠れる穴(三窟)を持つという意味だ。つまり、身を守るためには一つの策に頼らず、複数の策を持つことが重要だということ。野球でも経験がある。誰かがケガしたらどうするのか。そういう準備をして長いシーズンを戦わないといけない。それもいかに幅広い準備をしておけるかが重要で、主力選手がケガしたとき「この選手のケガは想定外」ではいけない。人間、誰でもケガをするからだ。

 人は昔から、自然から学んできた。それなのに今、人間の都合で余計なことを進めてしまう。自然の摂理に逆らうから何かが起こるのではないか。この異常気象の中、人間が工夫していかなければ地球は守れない。先を考え、幅広く備え、対応していく。預かっている地球を次世代へちゃんと渡すために。

 自然界での生存競争を勝ち抜くために進化し、種を守り続けるヘイケボタルから、深く学んだ夏だった。

 ▽ヘイケボタル ゲンジボタルと並び、日本では身近な光るホタル。小型で多少水質の悪い水域にも棲息している。北海道から九州まで広く分布する。ゲンジボタルが短期間に集中して発生するのに対し、発生が長期間で一所に集中することがないのが特徴。北海道に棲息するホタルで発光するのはヘイケボタルだけ。例年の見頃は7月中旬から8月上旬で、湿度が高く気温も20度以上の生暖かい夜によく見られる。

 ▽戦国策 前漢の時代に劉向(りゅうきょう)が編集した書物のことで、全33編から成る。中国の戦国時代の遊説の士たちの権謀術数などの記録を国別に整理し、まとめられている。「戦国時代」という歴史上の名称は「戦国策」によるとされる。「蛇足」、「虎の威を借るキツネ」など故事成語のもととなった話を数多く収録。「狡兎は三窟あり」は、同書の「斉策」にある故事が由来で、孟嘗君(もうしょうくん)のために参謀の馮ケン(ふうけん)が三つの「窟」を用意した話による。

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