阪神はなぜ高卒野手を育てられないのか? 名スカウトが語る阪神特有の重圧とは。ライター・喜瀬雅則氏の著書『阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?』(光文社新書)より、抜粋・大幅加筆してご紹介する。〈全6回の4回目/つづきを読む〉

 ここで視点を「高卒野手」に移してみると、ここ30年近く、阪神では伸びを見せていないのだ。

 1980年から8年連続で掛布雅之が「開幕4番」を務めたが、その“掛布後”に、高卒の生え抜き選手で「開幕4番」を務めたのは、2000年の新庄剛志(福岡/西日本短大付高/89年5位)、2003年の浜中おさむ(和歌山/南部高/96年3位)だけ。

 その2人も、その後の「開幕4番」はなく、クリーンアップ定着もできていない。

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 掛布以降の高卒野手で、阪神在籍中に通算500安打以上を放ったのは、807本の関本賢太郎(奈良/天理高/96年2位)と505本の浜中、955本の新庄の3人だけ。1656本の掛布の後、高卒野手では“大台”に誰も到達していないのだ。

 育て切れないのか、育つまでに時間がかかって待てないからなのか。2015年からの3年間、ドラフトで高校生の野手を獲得していない。

掛布はなぜ育てられたのか

 阪神のドラフト1位指名を受けた投手で、オリックスでスカウト部長などを歴任した谷村智啓の現役での阪神在籍時代(1971~79年)は、掛布雅之が台頭してくる時期とちょうど重なっている。

「カケは入ってきたとき、金田(正泰)監督やったけど、サードで1年間、目つむって使ったんちゃう? エラーもあって暴投もあったけど、1年間使って、結局2年目に爆発した。それだけの能力があったということや。だから、使わなアカンねん。途中で諦めんとな。ミスもあるやろうけど、だってみんな、ミスするんやで。結局、使われたら本人は努力するやん。それが力になる。そこやろ」

 こいつは、モノになる。将来を見据えて、こいつを育てる。見抜き、信じ、我慢して使い続けるという、首脳陣のそうした覚悟も重要なのだ。

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