横浜の敏腕スカウト長谷川国利氏はなぜ巨人へ移籍したのか? 今明かされる長野久義、菅野智之獲得の舞台裏や球団としての狙い、現場・編成のリクエスト、大谷翔平や佐々木朗希、今永昇太らをなぜ指名しなかったのかなどを記した書籍『ジャイアンツ元スカウト部長のドラフト回想録』(カンゼン)より一部転載でご紹介します。〈全8回/第6回につづく〉

《2011年 日本ハムの強攻指名》

日本ハム山田GMから売られた喧嘩

 この年は前年と違い早くから東海大の菅野智之(現・オリオールズ)を1位で指名しようという話になっていました。高校時代は1位で推すほどのピッチャーではなかったことは前に書きましたが、大学ではストレートがコンスタントに150キロくらい出るまでになっており、スライダー系の変化球も良くなっていました。少し大きい変化のボールと、小さく変化するカットボールを上手く投げ分けることもでき、加えてスプリットもしっかり低めに投げられる。1年目から一軍である程度勝ってくれるだろうと期待のできる即戦力のピッチャーに成長していました。

 早々に1位指名を公言したのは、「原監督の甥だから指名しても拒否されるだろう」と他球団に手を引いてもらいたいという思惑も当然ありました。

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 私もかなり早くから「本人の意思も相当に強いみたいだ」ということを色んなところで言って回っていましたから、他球団が指名してくることはないだろうと思っていました。菅野本人も子どもの頃から伯父である原監督のことを見て育っていますから「もちろんやるなら巨人で!」という気持ちは早くから持っていたことでしょう。

日本ハム1位指名は菅野「止めてくださいよ…」

 迎えたドラフト会議の当日。会場に入る前、原監督と私が一緒にいるところへ日本ハムのGMである山田正雄さんが来てこう言ったのです。

「原監督、甥っ子さんは凄いね。あれは1年目から相当やるよ。間違いなくナンバーワンですよ。長谷川くんもずっと見てきて良かったね。おめでとう」

「いやぁ、ありがとうございます」などと言って会場入りしたのですが、蓋を開けてみたら日本ハムの1位は菅野でした。会場もこの指名には大歓声。私は「止めてくださいよ……」という思いと「何だよ! 山田さん!」という怒りにも似た気持ちになりました。

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