1994年に中日との「10・8」決戦を制し、17年ぶりに宙を舞った

監督として最も思い出深い試合は、1994年10月8日の中日戦(ナゴヤ)でしょうね。同率で並ぶ2チームがシーズン最終戦で対決し、勝った方が優勝なんて、80年の歴史の中で「10・8」だけです。これからもないでしょうね。

この年は数々のドラマがありました。4番は中日から移籍1年目の落合博満。落合効果は抜群で、開幕戦は松井秀喜とのアベックアーチが飛び出して快勝しました。巨人の通算7000試合目となった5月18日の広島戦(福岡ドーム、現みずほペイペイドーム)では槙原寬己が史上15人目の完全試合を達成。投打の歯車がかみ合った前半戦は、首位を独走しました。

しかし、夏場を迎えると打線が低調になり、中日と広島に激しく追い上げられました。7月24日には遠征先に、母(ちよさん)の訃報が届きました。125試合目、9月28日の中日戦(ナゴヤ)に敗れて同率で並ばれ、翌29日は最後の直接対決でした。ところが台風の影響で中止になり、その試合が10月8日に組み込まれたのです。

《10月1日以降は巨人、中日ともに3勝1敗。129試合を終えて69勝60敗で並んだまま、10月8日のシーズン最終戦を迎えることになった》

長いシーズンの優勝が、たった1試合で決まるんですよ。北海道から沖縄まで日本中が注目しましたから、前日に「国民的行事」と表現しました。当日は「勝利以外に何もなし。いよいよきたな」という気持ちです。自信はありましたよ。並ばれたとはいえ、一度も追い抜かれなかったからね。

本塁打を放った落合博満(背番号60)を最敬礼で出迎える

選手には動揺している者もいたし、淡々とした者もいました。中日の先発は、苦手にしていた左腕の今中慎二。出発前に宿舎で行った最後のミーティングでは、今中を打ち込んでいる場面だけを集めたビデオを見せました。それが終わると、大きな声で「いいか、われわれは勝つ、勝つ、勝つ」。この時が初めてです。選手に暗示をかけたのは。ビデオを見た後、下を向いていた選手は驚いて顔を上げました。腕を突き上げながら、「おーっ」と声を出した選手もいましたよ。

試合は6―3で勝ち、選手の手で17年ぶりの胴上げ。竜にまたがり、天にも昇る気持ちでした。

(2014年12月17日付紙面に掲載)

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