自ら招いた無死満塁の大ピンチ。“ノミの心臓”はまたしても試合を壊してしまうのかーー。誰もがそう思った中、しかし齋藤友貴哉は続く三者を切ってとり、“自作自演のピンチ”をしのいで渾身のガッツポーズを見せた。トラウマを克服した齋藤が目指す先に見据えるものとは。<全3回の3回目/1回目から続く>

“自作自演”のピンチ脱出劇

 北海道日本ハムファイターズの齋藤友貴哉はまた独り相撲を演じようとしていた。

 2024年8月27日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦は終盤にもつれて延長戦に入っていた。11回のマウンドに上がったのが齋藤だった。

 だが、立ち上がりから浮足立つ。先頭の鈴木大地にセンター前に運ばれると、田中和基のバントを捕った齋藤は二塁に送球したがベースのはるか手前をはずむ悪送球になった。さらに、小郷裕哉のファーストへの詰まったゴロに一塁のベースカバーに入ったが内野安打にしてしまう。あっという間に無死満塁のピンチに陥った。

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 投手コーチの建山義紀がマウンドにやってきて、一息入れる。

 齋藤はここから速球で押しに押した。太田光を157kmで空を切らせると、渡邊佳明を二ゴロに片づけ、小深田大翔も球威で圧倒して投ゴロに仕留めた。

 その瞬間だ。齋藤は両手を天に突き上げて仁王立ちした。

 まるで優勝投手のような“場違い”なガッツポーズに新庄や山田勝彦バッテリーコーチらが指を差しながらツッコミを入れた。

 自作自演のピンチ脱出劇について、新庄は自身のインスタグラムにこう投稿した。

《明日から登録名を さいこう ゆきや に変更させてもらいます》

 ファンの支持を得ることになった、絶妙なニックネームの誕生である。

悪夢を葬るターニングポイント

 だが、齋藤自身は真顔で振り返る。

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