坂本誠志郎に「FA」を聞いたのは昨年の宜野座キャンプだ。24年シーズン中のFA権取得が確実だった坂本。長く読み続けていただいている読者なら覚えているかもしれない。坂本のFA流出はチームにとって避けたい事態では…? という話に、こう答えた。
「ボクが出たら痛いんですか? 別に痛くないでしょ。じゃあ本当に痛いかどうか。いっちょ、やってみますか」。冗談交じりながらドキッとする発言をかました。結局、FA宣言せずに残留した坂本に言った。阪神に残ったね、と。
「そうですね。甲斐さんだけかな? 捕手で動いたのは」。笑顔で坂本はそう答えた。その通り、甲斐拓也はソフトバンクから巨人にFA移籍したが、もう1人、注目されていた中日の木下拓哉はFA残留した。
ソフトバンクも甲斐には残留してほしかったのでは、と思う。グラウンドの指揮官とも言うべき捕手が重要な存在なのは言うまでもない。さらに個人的に、チームに詳しい生え抜きが望ましいのでは、と思ったりする。過去には例外での成功もあるけれど。
そういう意味でも現状の阪神には強みがある。坂本と梅野隆太郎の2枚看板。どちらも生え抜きでレギュラー格の選手というのは、近年、阪神がAクラスを続ける要因の1つだと思う。
梅野は33歳、坂本が31歳だが捕手の激務を考えれば、数年後を見据えた若手捕手の育成は必要だろう。そんな狙いもあり、この宜野座キャンプ、1軍実績のない栄枝裕貴、中川勇斗を鍛えている。
「栄枝は強肩。中川はキャッチング、そして何といっても打撃でしょう」。連日、2人を鍛える1軍バッテリーコーチ・野村克則は2人のアピールポイントをそう説明した。指揮官・藤川球児が今季、捕手を何人制にするかは、今後の話だが将来を見据えた「第3の捕手」育成は重要。そこを争う戦いは8日の紅白戦から始まるのかもしれない。
「1つの出番を全力でプレーしたい。出番があるかどうか分かりませんが」。最近、連係プレーでお小言を食らった栄枝は元気に話した。21歳と若い中川も「頑張りたい」にきっぱり。
「第3の捕手は誰?」。坂本に聞くと「そんなの第1、第2も分かりませんよ。競争ですから」。本当にそんな状況になれば、いよいよ11球団から羨望(せんぼう)のまなざしを浴びるのは間違いないが-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

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