北海道日本ハムファイターズと福岡ソフトバンクホークスの一騎打ち。しかも、有原航平がソフトバンクから日本ハムへ“横移動”した分だけ、ほんの少し日本ハム有利――。つい先日まで、わたしのパ・リーグ予想はそんな構図だった。
2025年の順位表を見ても、1位ソフトバンク、2位日本ハム。その差は決定的というほどではなかった。しかも、そこに有原の加入がある。戦力の上積みという意味では、日本ハムのほうがわかりやすかった。阪神ファンとして、ソフトバンクの層の厚さや勝負どころでの底力は嫌というほど思い知らされてきたが、それでも今年は日本ハムが上にいくのではないか。そんな見立てだった。
だが、その予想はいま、大きく揺らいでいる。
理由は、WBCだ。
侍ジャパンはベスト8で敗退した。大谷翔平が言っていたように、「優勝以外は失敗」と捉えるなら、今回の大会は日本にとって成功とは言い難い。もちろん、得たものがゼロだったわけではない。阪神でいえば佐藤輝明や森下翔太にとっては、この経験が次の飛躍の起点になる可能性がある。髙橋宏斗や金丸夢斗のように、自らの現在地を世界基準で確認し、さらに一段上がるきっかけをつかんだ選手もいるだろう。彼らにとって、WBCは間違いなくプラスだった。
だが、逆の選手もいる。

今回のWBCで、少なくとも結果の上では傷を負ったように見える選手。その代表が、日本ハムの伊藤大海とソフトバンクの近藤健介だ。
伊藤は、あの逆転3ランを浴びた。近藤は、東京ラウンドを無安打で終えた。日本ハムとソフトバンク、それぞれの大黒柱が、所属チームに戻るとき、前向きな達成感よりも悔しさや痛みを強く抱えていたとしても不思議ではない。もちろん、彼らはプロである。敗北を受け入れ、切り替えることも仕事の一部だ。だが、人間である以上、そう簡単に割り切れるものでもない。

新庄剛志監督が、ベネズエラ戦の直後に伊藤へダイレクトメッセージを送ったという報道には、強い意味があると思う。監督が、あのタイミングで特定の選手へすぐに言葉を送る。それは放置できない傷が、そこにあると察知したからだろう。英断だと思う。だが、英断であることと、すぐにプラスへ転じることとは別の話だ。マイナスをゼロに戻すことはできても、一気にプラスへ跳ね上げるのは簡単ではない。
近藤についても同じだ。球界屈指どころか、史上最高レベルのヒットメーカーが、たった1本のヒットすら打てなかった。その事実は重い。仮に不振の要因がピッチクロックなど新ルールへの適応にあったとして、NPBに戻れば本来のリズムを取り戻せるのだとしても、それは「マイナスがゼロに戻る」話にすぎない。開幕から誰にも止められない絶好調の近藤が見られる、とまでは言い切れない。
だからこそ、開幕前の見立ては少し変わる。
日本ハムにはWBCの傷を引きずる可能性がある。ソフトバンクも無傷ではない。だが、チーム全体の厚みと、近藤に何かあっても周東佑京のような別の武器で流れを変えられる可能性を考えると、現時点ではソフトバンクのほうが不安要素は少ない。予想を組み直すなら、1位ソフトバンク、2位日本ハム。その並びに変えざるを得ない。
となると、俄然おもしろくなるのが3位以下だ。
個人的にもっとも注目したいのはロッテである。種市篤暉は、今回のWBCで評価を一段も二段も上げた。もともとフォークの切れ味は一級品だったが、世界の舞台でその凄みが可視化されたことの意味は大きい。ひとり核になる投手が生まれると、チームは変わる。「勝ってくれるといいな」ではなく、「あいつなら勝ってくれる」と周囲が信じ始めたとき、空気は変わる。藤原恭大や髙部瑛斗にも勢いが出てくるなら、ロッテは一気に台風の目になりうる。
オリックスも怖い。宮城大弥と九里亜蓮という計算できる先発2枚を持っているのは大きい。打線は中川圭太、太田椋あたりの継続性が絶対条件になるが、宮城が本来の勝ち星を取り戻し、最多勝争いに加わるようなことになれば、Aクラスどころか優勝戦線まで見えてくる。
一方、楽天と西武は、クライマックス・シリーズ争いならともかく、優勝となるとまだ像が結びにくい。楽天は打線に勢いを欠き、チーム全体から「何がなんでも優勝する」という圧が見えにくい。西武は今井達也の穴があまりにも大きい。桑原将志のような補強は魅力だが、それを返す中軸の迫力がどこまであるか。
というわけで、開幕1週間前の時点でたてたわたしの予想はこうなる。
1位ソフトバンク、2位日本ハム、3位オリックス、4位ロッテ、5位西武、6位楽天。
自信は、もちろん、まったくない。
ただひとつ確かなのは、今年のパ・リーグの見立てを揺らした最大の要因が、補強でもオープン戦でもなく、WBCだったということだ。シーズンが始まれば、あの敗戦の記憶を最初に振り払うのは誰か。そこから、優勝争いの景色もまた変わってくる。
【文章】金子達仁
【写真】タケダユタカ

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