WBC連覇の夢は準々決勝で途絶えた。出場機会に恵まれなかった阪神タイガースの主将は、どんな思いで侍ジャパンを支えていたのか。坂本誠志郎の知られざる“献身”に迫った。(全2回の2回目/前編へ)

石井大智の負傷辞退「一緒に勝負したかった」

 坂本誠志郎が背負うと決めた思いは、WBCメンバーから落選した岸田行倫のそれだけにとどまらなかった。

 2月、3人のリリーバーが負傷辞退を余儀なくされた。西武の平良海馬に阪神の石井大智、パドレスの松井裕樹。中でも石井は阪神キャンプからピッチコム、ピッチクロックの準備期間を共有した相棒だった。

「どういう風に抑えるか、どういう風にやっていこうかっていうイメージは、大智で描いている部分が多かった。それを出せないのは……。本人は悔しいのが一番かもしれないけど、僕は寂しい。やっぱり一緒に勝負したかった」

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 もちろん、WBCの舞台に立てないメンバーは負傷者だけではない。

 人一倍責任感の強い男は、昨秋の宮崎合宿、強化試合の韓国2連戦で同じ空気を吸った仲間の胸中にも心のアンテナを張り巡らせていた。

「宮崎合宿地の球場に戻ると、ここでソフトバンクの野村勇くんがサードでノックを受けていたなとか、楽天の村林一輝くんに目薬を貸してもらったなとか、そういった記憶が少なからず蘇ってくるものなので」

 2026年WBCの侍ジャパンメンバーは計30人しかいない。出場を熱望しながら涙をのんだ選手たちの無念を、選出された男たちは皆、背負っていた。

 だからこそ、坂本は昨秋から大会閉幕までの約4カ月間、寸暇を惜しんで準備と研究に時間を割き続けた。

 そして、本番ではベンチスタートが続いても、共にリベンジを成し遂げたかった左腕とコンビを組めなくても、懸命に声をからし続けたのである。

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