曽谷龍平「心のどこかで計算していた自分がいたのは確かだったと思うんですよね」
色気も邪念も捨て切った、堂々の16球を見せつけた。野球日本代表「侍ジャパン」の曽谷龍平投手(オリックス)は6日、第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンドC組の初戦、チャイニーズ・タイペイ戦(東京ドーム)の7回に救援登板。5番手でマウンドに上がると、任された1イニングを無安打無失点に封じた。
13-0でゲームセット。7回コールド勝ちを収めるマウンドには、背番号47が立っていた。最後の打者を三振に仕留めると、東京ドームの中心で小さく拳を握った。昨年11月に行われた韓国との強化試合では先発登板して3回無失点。WBC初出場の切符を勝ち取ったが「本当に運が良いだけですよ。でも、選んでもらったからには、しっかり役割を果たしたいです」と気持ちを込めていた。
“憧れ”は胸の奥底に追いやった。昨季はオリックスで先発ローテーションの柱として8勝をマーク。自身初の2桁勝利も見えていたが、シーズン最終盤は勝ち星を重ねることができなかった。ある日の登板後、岸田護監督から呼び出された。
「結構、落ち込んでいたんです。そうしたら、岸田監督に声を掛けていただいて……。そのまま監督室でお話をさせてもらいました」
指揮官から問われた。
「『2桁(勝利)のこと考えてたか?』と。僕が頷くと『大谷翔平や山本由伸がそんなことを考えながら野球やってると思うか? 自分の(任された)試合でベストを尽くすだけやと思うぞ』って……」
その言葉にハッとさせられた。「意識していたわけではないんですけど、心のどこかで計算していた自分がいたのは確かだったと思うんですよね。そこからは目の前のゲームに全力で取り組めるようになったと思います」。ほんの少しの“意識改革”が生きた。日の丸を背負う25歳は、密かに胸を張った。
昨年末に入籍「今日の夜、婚姻届に名前を書くんです。緊張しますよね」
昨年末に入籍。守るべき愛妻の笑顔が心の支え。もう、1人ではなくなった。昨年12月のある日、いつになくソワソワしていた。
「今日の夜、婚姻届に名前を書くんです。緊張しますよね。どんな感じだったか覚えてますか……?」
マウンドを降りれば、優しい青年のまま。「2枚、ちゃんと準備しましたよ。うまく書けるか、わからないですし……。僕だけが書くわけじゃないので(笑)」。そっと相手を思いやることができる男は、誰よりも強い。
初めてのWBCではメジャー組も大勢が参加。この日は試合前に大谷翔平投手(ドジャース)らとグータッチで決戦に備えた。「(選出された際)僕で良いのかな……という気持ちはありました。だけど、精一杯やらせてもらうだけです」。優しさを強さに変え、勝負師になる。究極のギアチェンジを見せ続けた先に、歓喜が待っている。
(真柴健 / Ken Mashiba)


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