監督になって変わった「時」の感じ方

栗山英樹監督

写真 松橋晶子

 そして迎えた監督1年目。「時」の感じ方に、違いが起きた。「あんなにきつい1年間はなかったので。いつもみんなに品評会をされて晒されている感じ。あの1年だけは、10年くらいに感じましたよ」。サイン一つ出すのにも、周囲の反応を気にした。異常なほどに長く感じた時間は、リーグ優勝という結果が報いとなった。

 もしも時を戻せるなら……。そんな問いに、栗山は数秒黙り込み、ふと顔を上げた。

「中学生くらいですかね。あの時期にもう少し野球で、きちんと技術を身に付けていたら、その後の野球が全然変わっていたかもしれないなって思うので」

 一方で、「ただ、選択として帰りたいところはないんです。導いてもらって、いい選択をしてきたと思うので、比較的『あれを変えておけば』というのが今ないのは、幸せかもしれないですね」と歩んできた人生に思いを馳せた。

 とにかく真摯に野球と向き合い、野球に時間を費やす。原動力は「好きなことを仕事にさせてもらっていて、もっと知りたいし、もっといいものはないかなって、それだけなんですよ」と栗山にとっては至ってシンプルだ。

栗山英樹監督

写真 松橋晶子

 例えるならば、ゲームに熱中して、ステージをクリアするために工夫して、気が付けば1日が過ぎていた子ども時代。「あのような状況は一番いいと思っているので」と自然な形で情熱を注いでいる。

 ふと心を休めるのは、北海道・栗山町で自然と接している時。名前が同じという縁から天然芝の野球場「栗の樹ファーム」をつくり、ログハウスを建てて自宅を構えた。「草刈りとか、球場の芝刈りとか、自分でしていますけど、その時だけはあんまり何も考えていないかもしれないですね」。野球人ではなく、“普通の人”に戻る数少ない瞬間でもある。

 全力で駆け抜けている野球人生。今後も費やしたいのは、野球界の未来のための時間だ。さまざまなプランが、栗山の頭の中を巡っている。

(後編へ続く)

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