2022年にボートレーサーへと転身した元プロ野球選手の野田昇吾(32歳)。小柄なサウスポーは、どんな経緯でまったくの異業種に挑戦することになったのか。残酷な戦力外通告、妻の反対、20kg以上の減量……。壮絶な舞台裏を本人に聞いた。(全3回の1回目/#2、#3へ)

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 間近で見る野田昇吾の印象は“ごく普通の青年”だった。身長167cm。アスリート然とした威圧感はまったくない。その体躯で、フィジカルエリートが集結し、競い合うプロ野球の世界に足を踏み入れた。ごく普通の青年が、ごく普通の努力をしてたどり着ける場所ではない。

 2015年のドラフト3位で埼玉西武ライオンズに入団。2016年6月28日のプロ初登板では、3つのアウトをすべて三振で奪った。

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「あのときは、“通用するのかも”と感じました」

「そういう世界なんで」結婚した2020年に戦力外通告

 同じ身長の石川雅規(ヤクルト)をはじめ、技巧派が多い小柄なサウスポーの類型に反して、野田の投球スタイルは「かわしていくより、ストレートでガンガン押していくイメージ」。2年目の2017年は38試合に登板して防御率1.98をマークした。同年10月には、辞退した山岡泰輔(オリックス)に代わって『アジア プロ野球チャンピオンシップ』の日本代表にも選出されている。

 続く2018年は58試合に登板。辻発彦監督のもと、“山賊打線”が猛威をふるった西武のリーグ優勝に貢献した。この体でも、プロ野球でやっていける。手応えはたしかにあった。

 わずか2年後の2020年。肩を痛めて3試合の出場に終わり、西武から戦力外通告を受けた。

「思うことはたくさんありますね。でも、そういう世界なんで。僕がクビになった直後に日ハムから吉川光夫さんを(金銭トレードで)獲得していて、そちらを選んだのかなとか。プロ入りからの5年間で一度も故障者リストに入ったことはなかったんですよ。でも肩の状態はずっと悪くて、特に2019年は注射を打ちながらやっていて。トレーナーと相談して、オフは治療に専念して20年を迎えたんですけど、どうなんだろう。やっぱり肩のこともあって、球団からは見切られちゃったのかな……」

 実働5年、主に中継ぎとして通算144試合に登板して防御率3.09。決して悪くない数字のようにも思えるが、球団の判断はどこまでもシビアだった。2020年の元日には、声優の佳村はるかさんとの結婚を発表していた。思い描いていた人生のプランはあっけなく瓦解した。

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