連載: プロが語る4years.
川浪康太郎
2026/02/15
(最終更新:2026/02/15)
# プロが語る4years.
#青森大学

今年1月、久米島での自主トレに励む横浜DeNAベイスターズの蝦名達夫(撮影・川浪康太郎)
地元・青森に希望を――。今回の連載「プロが語る4years.」は、横浜DeNAベイスターズの外野手・蝦名達夫(28)です。青森商業高校、青森大学を経て、2019年のドラフトで6位指名を受けプロの世界へ。6年目の昨季は自己最多の115試合に出場し、33試合連続出塁を記録するなどキャリアハイの成績を残しました。後編では、22年間を過ごした青森や母校への思いを語ってもらっています。
横浜DeNA・蝦名達夫(上)飛躍の6年目、つかみかけた「感覚」と変化した「性格」
「見てもらえない時代」を動かすきっかけに
青森大が所属する北東北大学野球リーグは、今でこそ毎シーズン熾烈(しれつ)な優勝争いが繰り広げられ、プロ野球選手も各大学から輩出されるようになった。だが、以前は「富士大学1強」の時代があった。当時を知る蝦名は「お客さんは富士大の試合が終わったら帰ってしまって、なかなか見てもらえない時代でした」と回顧する。
「今は変わってきましたが、そのきっかけを作れたと思っています。プロ野球選手が出れば(その選手の出身校を)見る目が変わるし、北東北に人が来る。もっと頑張ってこれからもどんどんきっかけを作っていきたいです」

昨年のクライマックスシリーズ第1ステージ第2戦で左前にサヨナラ打を放った(撮影・竹花徹朗)
蝦名は青森大の知名度向上に大きく貢献した。実際、青森大の選手を取材すると「蝦名さんのようになりたい」という声が多く聞かれ、中には蝦名の存在が進学の決め手になったと話す選手もいる。
一方、プロ入り後の実績や振る舞いも後輩たちの評価に直結する。蝦名は「たとえば素行が悪くてクビになった選手がいた場合、その選手の出身校の印象も悪くなってしまう」と表情を引き締める。その上で、大学の後輩で現在もチームメートである庄司陽斗の名前を挙げながら、「僕らが結果を残して『青森大の選手いいな』と言われるようにしなければならない。後輩の道を作るのは僕らだと思っています」と力強く口にした。

「後輩の道を作るのは僕らだと思っています」(撮影・川浪康太郎)
細川亨さんの存在も、決断を後押し
蝦名自身はいわゆる「エリート街道」を歩んでもおかしくない実力の持ち主だった。中学3年時は強豪校から誘いを受けたが、地元の県立・青森商業高校へ進学。経済的な事情もあったとはいえ、「公立高校に行って私立を倒したい」という思いが強かった。
高校3年時も東都大学野球リーグに加盟する大学などから声がかかった。だが、「プロを目指す上ではまず試合に出ないと始まらない。公立高校出身の無名選手が、東京の大学で1年生から試合に出場するのは難しい」と冷静に考え、東北に残る選択をした。
最終的に青森大と富士大で悩み、「青森からプロ野球選手になりたい」と地元にこだわって青森大へ。幼少期に野球教室で対面して以来、憧れていた細川亨さん(現・福岡ソフトバンクホークスバッテリーコーチ)の存在も決断を後押しした。細川さんは県立の青森北高校から青森大へ進み、埼玉西武ライオンズなどで活躍した青森のスター。大先輩のように青森からプロ野球界へ羽ばたくのが一つの目標だった。

高校時代の蝦名「公立高校に行って私立を倒したい」という思いがあった(撮影・朝日新聞社)
青森大で過ごした鍛錬の日々、手にした「誇り」
青森大では自らに「1日1000スイング」を課して練習に明け暮れた。入学当初は同期が60人以上おり、甲子園常連校出身の選手と接する中で学ぶことも多かった。良い部分は吸収し、悪い部分は反面教師にする。プロ入りの夢に向かって己の道を突き進んだ。
三浦忠吉監督からは「達夫が打たないと勝てないぞ」とたびたびプレッシャーをかけられたが、そのプレッシャーさえも練習のモチベーションに変えた。計4度ベストナインに輝き、1年秋に打点王、4年春に本塁打王、4年秋に首位打者を獲得。4年秋は主将としてチームを16季ぶりのリーグ優勝に導いた。
在学中は当時八戸学院大学の高橋優貴(元・読売ジャイアンツ)、当時富士大の鈴木翔天(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)ら、のちにドラフト指名を受ける好投手をも苦にしていなかったため、夢に近づいていることは日々肌で実感していた。

2019年のドラフト会議で指名を受け、仲間と喜びを分かち合う(撮影・朝日新聞社)
そしてこじ開けたプロへの扉。蝦名は「まずはプロに入ることが成功だと考えているので、(進路の)選択に後悔はまったくありません。もちろん入ってからが勝負ですが、青森から、青森大学からプロ野球選手になれたことは誇りに思っています」と胸を張る。
「ベイスターズの顔」を目指す
母校のことは今でも気にかけている。昨年は青森大が17年ぶりに全日本大学野球選手権に出場。ライブ配信で戦況を見守ったといい、「僕も出たことがないのでうらやましかったです」と笑みをこぼした。
「僕らの時代は『富士大が勝って当たり前』という雰囲気だったので、今度は青森大にそうなってほしい。全国大会常連の大学になれば青森大出身のプロ野球選手も増えると思うので」と蝦名。後輩たちの飛躍を心から願っている。
青森の地元メディアから取材を受ける際などに、自身の活躍が青森に届いていることを実感するという。ただ、「もちろんまだまだ満足していない」。地元に希望を与えるため、「まずはレギュラーに定着してベイスターズの顔になる」と誓う。蝦名の名が全国に轟(とどろ)けば轟くほど、青森で白球を追う若武者たちの「道」は開けていく。

自身の活躍を地元に届けると同時に、後輩たちの飛躍も願う(撮影・川浪康太郎)
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