かつて大谷翔平よりも“天才”と呼ばれた同世代がいた。大谷に「負けた」と言わせた少年。大谷が落選した楽天ジュニアのエース……。天才たちは、30歳になってどうなったのか? 書籍『さよなら、天才 大谷翔平世代の今』が発売され話題になっている。
その書籍のなかから“藤浪晋太郎、30歳の告白”を紹介する。阪神時代の苦悩、イップスの話、メジャー挑戦、結婚願望……今年2月、筆者はアメリカへ飛び、藤浪晋太郎(当時マリナーズ)に話を聞いた。【全4回の3回目/第4回も公開中】
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阪神ファンの間で「161球事件」と呼ばれている試合がある。その試合は確かに「事件」と言いたくなるほどの不可解さに満ちていた。
あの「161球事件」…藤浪の回想
2016年7月8日の広島戦で、先発した藤浪は初回に2つのフォアボールを許すなどし、いきなり3失点してしまう。その後は途中、明らかな交代機があったにもかかわらず8回まで続投させられ、最終的に8失点で負け投手になった。球数は計161球にものぼった。
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試合後、監督の金本知憲は「何点取られようが、何球投げようがと思っていた」とコメント。つまり、続投はローテーションの柱として期待していたにもかかわらず、不甲斐ない投球を見せた藤浪に対する懲罰の意味合いが含まれていたことを認めた。
「金本さんの161球というのがありましたけど……」と問いかけると、藤浪は「ありましたね」と意外なほど軽やかに受け止めた。
「あのことがトラウマになっているということはないんですけど、あの試合が金本さんをはじめとする首脳陣が自分に対して思っていたことを象徴しているんです」
そのあと、言葉の使い方が適切だったかどうかを確かめるように「象徴……」と小さな声でつぶやき、確信を得たのだろう、もう一度、同じ言葉を繰り返した。
「象徴的な行動なんです。ローテーションピッチャーが情けない、なんて投球をしてるんだ、と。あと、さっきも言いましたけど、(藤浪は)野球をナメてんのかっていう。自分はローテーションで投げてるピッチャーがこれで肘が飛んだらどうするつもりなん? くらいにしか思ってなかったんですけど」
象徴。つまり、藤浪のことを今後、どの程度の投手として認識し、どう扱うつもりかを如実に物語っていたということだ。
厳しいメディア「抑えた次の日でさえ…」
読書好きな藤浪は自分が発する言葉にも敏感だった。

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