栗山英樹氏「自然からのたより」

 侍ジャパン前監督で日本ハム・栗山英樹チーフ・ベースボール・オフィサー(CBO=64)による連載「自然からのたより」は、北海道栗山町の栗の樹ファームで実りの秋を迎えた栗の木の教えについて。例年ならちょうど収穫期となる栗の実が、熟れずに青いイガのまま地面に落ちているものがある。近年の異常気象の影響か。ただ、本当に猛暑が原因なのか。先入観や固定観念を捨てて考えることが大事なのだと、栗の実が訴えかけている。

 この時季、栗の樹ファームはちょうど「実りの秋」を迎える。栗山町に移住した02年当時は、現役時代の背番号と同じ46本だった栗の木も今は100本を超える。多くの実を付け、今月中旬くらいまでが収穫期となるのだけど、今年はちょっと異変があった。

 熟し切らずに、青いまま地面に落ちているイガがある。はじけた中身を見ると、実がまだ白っぽい。そんな状態のものがいくつもあった。もちろん、しっかり熟して黄色いイガの中から焦げ茶色の実をのぞかせているものもあるが、例年よりも少し小ぶりだ。これも夏の異常な暑さの影響なのか、栗山町の「栗博士」くすみさんによると「小さかったり、熟さずに落ちてしまう傾向がある」という。酷暑だった今夏。日本の栗の北限と言われる栗山町も例外ではなかった。ただ、その酷暑だけが異変の原因だったと言えるのか。

 これは古代中国の思想家、老子の思想を表現する言葉だ。老子の説く理想的な人格者である「聖人」は、善悪や正否など人為的な価値判断にとらわれず、自然のあるがままを受け入れるという。この意味は凄く重要で、監督をやってきて最終的に気がついたことは「正しいと言ってはいけないのではないか」ということだった。自分の考えが絶対に正しいと思ってしまうと、そこで思考が停止し、人の意見も「いや、それは違う」と聞けなくなってしまう。例えば、選手自身が打てる打ち方を見つければいいのだが、指導する側が「自分の考える打ち方と違う」となっては先に進めない。指導者のやり方と違う方法で結果が出る選手をどう指導できるか、それが大切なんだと感じた。

 地面に落ちた青い栗のイガを見て思う。周囲の情報から「今年も暑かったからな」と単純に思い込んではいけない、と。本当にそうなのか、他に原因があるのでは、そう考えることが重要なんだ。縄文時代から重要な食料とされた栗が、改めて大事なことを示してくれた。食も思考も満たしてくれる。まさに「実りの秋」だ。

 ▽栗 秋が旬の代表的な果物。炭水化物やビタミン、ミネラルが豊富で疲労回復や美容に効果がある。外側のトゲトゲしたイガは苞葉(ほうよう)と呼ばれるつぼみを包むように変形した葉で、虫などから守る役割をしている。栗の木は日本では北海道南部から九州にかけて自生、または栽培され、産地としては茨城、熊本、愛媛が有名。栗山町は日本の栗の北限とされ町名も「栗」に由来しているとされる。日本原産の日本栗は病気に強く実が大きいのが特徴。

続きを表示

NPBHUB.COM | The Fanbase of Nippon Baseball & Nippon Professional Baseball