沖縄尚学の初優勝で幕を閉じた夏の甲子園。その熱狂から遠く離れた北の大地で、4人の球児が白球を追っていた。廃部から4年。まだ雑草が残る広いグラウンドで、静かに新しい物語が動き始めていた。【NumberWebオリジナル特集 全4回の1回目/第2回へ】

 北海道森高校野球部を訪れたのは8月6日。夏の甲子園の開会式が初めて夕方に行われ、熱闘が幕を開けたその翌日のことだった。

 函館から札幌行きの特急列車に乗り、海と駒ヶ岳を望む森駅で下車する。そこから車で10分ほど走ると森高校に到着した。校舎の隣にあるグラウンドは広大だが、外野部分は原っぱと化している。その原っぱの奥に、かろうじて黒土のグラウンドが見えた。

 吉田雄人監督のあとについて原っぱを渡り、黒土にたどり着くと、「おはようございます」と選手たちが挨拶してくれた。

 吉田は4人の顔を見渡した。三上陽斗(ひなと)、渡部大河、菅井裕哉、上出蒼空(かみでそら)。森高校の野球部員は、この1年生4人だけだ。

 森高野球部は2017年に活動休止、21年に廃部となっていたが、今春、4年ぶりに活動を再開した。彼ら4人は復活1期生だ。

 中学時代に全国優勝を経験した選手もいれば、中学では不登校だった選手もいるが、4人は終始和気あいあいとした雰囲気で、そこに時折吉田も溶け込む。4人がここに集った理由は様々だが、野球が好きで、元プロ野球選手に教えてもらえるという魅力に惹かれた点は共通する。

 吉田は、外野手としてオリックスで5年間プレーし、2018年に現役を引退した。元プロ野球選手がなぜ、田舎町の高校で野球部の復活に立ち上がったのか。まずは吉田のキャリアを振り返りたい。

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