セ・リーグ   阪神7-5中日 ( 2025年9月4日    バンテリンD )

<中・神(20)> 4回、熊谷の二ゴロで二塁へ向かう佐藤輝 (撮影・亀井 直樹) 
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 阪神が試合の主導権を握るうえで貴重だったのが4回表の追加点である。それは佐藤輝明の足が生んだ1点だった。

 1死一、三塁。打者・熊谷敬宥。相手投手・涌井秀章は一塁走者・佐藤輝に初球、3球目の前にけん制球を放り、様子を探っていた。2ボール―1ストライクからの4球目、両走者スタートでスクイズを仕掛けたが、バントはファウルとなって追い込まれた。

 中継モニター画面に阪神ベンチが映り、監督・藤川球児がサインを発信する総合コーチ・藤本敦士に耳打ちしていた。

 5球目。今度は一塁走者・佐藤輝だけスタートを切り、熊谷はファウルした。作戦は「一塁走者ヒットエンドラン、三塁走者ゴロゴー」だろう。

 相手二遊間は中間守備。二塁併殺を狙いながら打球によってはバックホームの陣形だった。一塁走者に走らせて二塁併殺を回避し、ゴロで1点をもぎ取る作戦である。

 6球目。こんどは走者動かず、ファウル。

 一塁けん制が入って7球目。再び佐藤輝だけ走り、再びファウル。熊谷は食らいついていた。

 8球目。走者は動かず投球はボールでフルカウントとなった。
 9球目。佐藤輝がこの打席3度目(スクイズを含め4度目)のスタートを切り、熊谷は打った。

 打球は二塁手の左、二塁ベース寄りに転がったが、俊足の佐藤輝はすでに二塁到達寸前だった。相手二塁手は本塁送球したが、ゴロゴーでスタートを切っていた森下は本塁を駆け抜けていた。野選で熊谷に打点がつき、貴重な追加点が入った。

 佐藤輝が俊足だからこそ敢行できた作戦だろう。もちろん空振りの少ない熊谷への信頼もある。

 佐藤輝は6回表2死一塁でもスタートを切った(中前打)。9回表2死一、三塁でも走ったが一塁手がベースについていない「守備側無関心」。いずれも盗塁は記録されなかった。ただ、今季すでにリーグ8位タイの10盗塁を記録する。

 低め変化球を右翼ポール際にライナーで運んだ36号先制2ランの技と力に加え、足も兼ね備えた主砲は頼もしい。

 名古屋での今季最終戦だった。勝利後、全員が左翼スタンドの前で整列、一礼。「球児コール」に藤川は両手を掲げて応えた。あす6日にも胴上げだ。台風一過の甲子園が待っている。 =敬称略=
 (編集委員)

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