マリーンズのドラフト1位ルーキーの西川史礁外野手は、辛い出来事から逃げずに向き合いながら野球人生を歩んできた。力強く鋭いスイングはもちろん、マイナスな体験を糧としてプラスに切り替えられる能力は、プロ入り後も常に成長を続けられる所以だろう。

“最後の夏”はコロナ禍

 アマチュア時代の苦しい思い出といえば、高校3年だった2020年のことだ。コロナ禍で、全国の高校球児たちも予期せぬ出来事が続いた。西川のいた龍谷大平安高も揺れていた。2月末に部活動を休止し、感染を防ぐために集団活動を停止することも決まった。授業も行われず、メンバーは寮を出ることになった。西川はスーツケースをもって、和歌山の自宅に帰った。

「ウチの高校は結構、早めに活動自粛を決めました。いったん、ここまで自粛をしてこの日に集合と決めていたのですが、どんどんその期間が延びていった。やっとみんなで練習が出来ると指折り数えて、その日が近づいたら、『延期することになりました』の連絡が届く。その連続でモチベーションを保つのに本当に苦労しました」

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 西川はそう振り返る。

自宅庭で父とトスバッティング

 自宅の庭で父親にボールをトスしてもらい、ひたすらネットをめがけて打ち返す日々が続いた。部活動は再開できるのか、他の仲間はどうしているのか、目標としている甲子園大会は行われるのか……。不安を打ち消すように、黙々とバットを振り続けた。それしかなかった。

 部としての唯一の決まり事は、その日にどのような練習をしたか、どのような思いで取り組んでいるのかをノートに書き込み、夜の9時までにメンバーのグループLINEに報告して共有し合うというものだけだった。本来なら仲間たちと汗を流している頃だが、唯一の繋がりは1日1回のLINEしかなかった。

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