
かつて伝説のスカウト・苑田聡彦に見出された男は今、仕事場をグラウンドからスタンドに移している。スカウトとしても苑田の薫陶を受けてきた松本有史だが、プロ野球の新しい時代を生きる彼には彼の流儀があった。(原題:[鼓動 新井貴浩と広島カープの2025年]第7回 受け継ぐべきもの)
7月12日、土曜日のよく晴れた朝のことだ。名古屋最大の繁華街である錦三丁目のビジネスホテルから大柄な男が出てきた。ポロシャツの上からでも胸筋の異様な隆起が分かる。周囲を歩く人々より明らかに頭一つ抜きん出たその人物は、トヨタ製のレンタカーのエンジンをかけると、東に向けてアクセルを踏み、苦笑する。
「マツダ製のレンタカーってあんまりないんですよ。特にこの地域はほとんどトヨタですから」
松本有史は広島東洋カープの東海地区担当スカウトである。愛称は「デカ松」。趣味は筋トレ、ハンバーガーはいくら新商品が出てもビッグマックしか食べない。元プロ野球選手ならではの巨体と保守的な食性を持つ48歳は、繁華街近くのインターから名古屋高速に乗った。
’90年代に流行ったJ-POPをBGMに、40分ほど車を走らせると、夏の甲子園地方大会が行われている郊外の球場に着いた。目当ての試合まで少し時間がある。松本はスマートフォンで前夜のカープの試合結果を確認し始めた。ナゴヤドームで中日ドラゴンズと戦ったチームは先発の森下暢仁を援護できず、1対2で敗れていた。ただ、松本が見るのは勝ち負けではない。誰がスターティングメンバーに名を連ねているか。そのうち何人が自分の担当した選手であるかをチェックする。どこにいても欠かすことのない日課である。
Shiro Miyake
「スタメン全員を僕の担当した選手で占める。ホームラン王とか最多勝とか、プロ野球の全てのタイトルを、自分の取った選手でコンプリートしたいという夢を持っていて、それがモチベーションなんです。今のところ、スタメンの最高は6人です」
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