野球初心者や経験のない子にどう教える? 巨人振興部が中学教員に教え方を指導

 球界が直面している野球離れの歯止めには、保健体育の先生の“協力”も必要になる。NPBとプロ野球12球団は、小・中学校の体育で必修科目となっている「ベースボール型」授業を担う教員に向けて、研修会の実施や教材配布に力を入れている。投げる・捕る・打つなどの基礎技術の教え方はもちろん、何より大切なのが子どもたちの“安全管理”。具体的にどんなことに注意すればよいのか。読売巨人軍振興部が6月に東京・足立区の中学校で教員向けに行った「ベースボール型授業研究会」を取材した。

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 会場となった体育館には、同区の中学保健体育科の教員50人が集まり熱気に包まれていた。指導するのは振興部の倉俣徹部長と、ジャイアンツアカデミーの西村健太朗、成瀬功亮の両コーチ。1時間強の研修の前半は、2班に分かれて投げ方、捕り方の基本の教え方を、後半はベースボール型ゲームのうち、バットを使わずに行う「バックホームゲーム」の実践方法を、実際に教員たちが体を動かしながら学んだ。

 足立区では年4回ほど保健体育教員同士の研究会を実施している。今回「ベースボール型」の実技講習を選んだ理由について、同区第十一中学校の鵜飼康成校長は「野球経験がない子や野球を知らない子も増えている。先生たちの中からも『細かい部分の教え方を知りたい』という要望があり、ジャイアンツアカデミーさんに依頼をしました」と意図を説明してくれた。

 プロ野球側としても、学校側からのニーズは願ったり叶ったりだ。2011年に必修科目に戻るまで、「ベースボール型」は長く学習指導要領から除外されたり選択科目にとどまったりする時期が続いた。20代後半から40代は授業で野球に触れた経験がない人も多く、「それが野球離れを加速させてしまった一因」と倉俣さんは見る。

 そこでNPBでは2015年に動画を活用した指導教材を作成して全国の学校に配布し、2024年からは5大ドームに教員を集めての体育授業研究会「エデュすぽ!」を展開。巨人振興部でも、主に都内の小・中学校へこれまで15回の訪問指導を行うなど、授業から野球に興味を持ってもらう機会の創出に力を入れている。

 投げ方では、ボールを握った手で耳付近をトントンと叩き、正しいトップの形をつくって回転動作で投げる「くるっとスロー」。捕り方では、2人組になって3メートルほどの距離でゴロ→ワンバウンド→下手投げと段階的に難易度を上げていくキャッチボールなどを、コーチ陣の指導に従って教員たちが実践。捕り方を担当した西村コーチからは、「回数を決めて早さを競争してみたり、1つのことができたらレベルアップさせたりすることで、子どもたちも飽きずに楽しみながらできます」とアドバイスが送られていた。

ベースボール型授業の安全管理に「“声のキャッチボール”がとても大事」

「ベースボール型ゲーム」の1つとして行われた「バックホームゲーム」は、次のような内容だ。

・守備側は捕手役が1人、内野手・外野手がそれぞれ5~6人並ぶ。
・攻撃側は打者役が1人ずつ、打つ代わりにボールをフィールド内の任意の場所へ投げる。
・そのボールを守備側が捕り、捕手役に返球する(ダイレクトキャッチでも同様)。外野は必ず内野手を中継してから返球する。
・打者役はダイヤモンドを回り、捕手役に返球されるまでに踏んだ塁数が得点になる。
・打者一巡したら攻守交替。守備側は内野・外野の入れ替えも適宜行う。

 野球を知らない子でも取り組みやすいよう、打撃要素を無くしてルールを簡略化するとともに、ゲームに加われない子が出ないような工夫もされている。ここで安全管理の上で、倉俣さんが教員たちに訴えたのが「声を出させる」ことの大切さだ。

「守備側が無言で捕って無言で投げ返すと、周りと衝突したり、受け手が捕り損ねてボールを顔にぶつけたりするリスクが高まります。攻撃側が投げる前に『さあ来い』と声を出して準備をさせるなど、“声のキャッチボール”がとても大事。それだけで、相当な安全管理になります」

 YGマークの指導陣から直接学べたことは、教員たちにも大きな刺激となったようだ。区立第十中学校の佐藤来哉先生は、「体育の教員は投げ方も捕り方も、自分がつまずいた経験がないことを子どもたちにどう教えるかに課題を感じています。そうした基礎の教え方、怪我のリスクの減らし方を学べたことは、持ち帰れるものとしてとても大きいです」と成果を口にした。

 足立区の公立中学校も他地域と同様に、部活動の地域移行・地域展開の問題に直面しているが、“大谷効果”もあってか、部活動で軟式野球をやりたい子、特に女子が増えているそうだ。そうした中で、参加した教員たちの熱意や学ぶ意欲が強く感じられたのは心強い。NPBや各球団の地道な活動が今後どのように実を結んでいくのか、注目していきたい。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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