プロ野球のリプレイ検証に、新たな論点が浮上した。7月2日、阪神―巨人戦(甲子園)の8回裏、森下翔太の甲斐拓也のホーム上のタッチプレーを巡り、藤川球児監督がリクエスト。その結果、アウトの判定はセーフに覆り、阪神が虎の子の1点を奪った。

 巨人の阿部慎之助監督は、「根拠を教えてほしい」と審判団に説明を求めた。すると、「リプレイ検証に異議を唱えたら退場」というセ・リーグのアグリーメントが適用され、ベンチから姿を消すことになった。

 この日、BS朝日で解説を務めた岡田彰布は「審判もマイクで説明すればいいのにね。説明しとったら監督も退場しとらんよ。こういう時は説明せなアカンわ」と異議を唱えた。今回の退場処分に関し、審判の“強権”に疑問の声も上がっている。

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 では、どうして審判に「リプレイ検証に異議を唱えたら退場」という権限が与えられたのか。それは「暴力の黙認」と「選手鼓舞の神話」から生まれたように感じる。

「リプレイに異議→退場」になるまで

 巨人監督の退場は史上3人目で、1974年7月9日の大洋戦(川崎)の川上哲治監督以来だった。王貞治、長嶋茂雄らを擁してV9を達成した大監督は、なぜ退場になったのか。

 事の発端は、平松政次の一球だった。2回1死三塁、河埜和正の内角へ放ると、左ヒジに当たった。しかし、平光清主審はバットのグリップエンドに触れてから、体に当たったとしてファールと判定した。すると、川上哲治監督が「デッドボールだ」と猛抗議。胸を2度小突いたため、退場が宣告された。“燃える男”長嶋茂雄はベンチで、ナインに声を掛けた。

〈監督がこんなことをやるのはよくよくのことだ。きょうはどんなことがあっても勝とう〉(74年7月10日付/朝日新聞)

 4連敗中の巨人は中盤まで1対3とリードされたが、苦手の平松から6回に柳田俊郎の犠牲フライ、上田武司のセンター前タイムリーで同点に。試合は延長10回、時間切れ引き分けに終わって5連敗を免れた。翌日、王はこう言った。

〈監督にすまないといった気持ちになった。しかし、そういった侮いや緊張が一種の気迫につながって、ムードはぐっと盛り上がっている〉(74年7月11日付/日刊スポーツ)

審判への暴力“容認”の歴史

 冷静沈着な指揮官の暴力による退場は、“芝居”とも見られていた。一報を聞いた他球団の指揮官は、こうコメントしている。

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