
3回裏2死一、三塁、佐藤が四球を選ぶ
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って
◇17日 交流戦 中日3―5オリックス(バンテリン)
移籍会見に臨んだ数時間後には、先発メンバーに名を連ねていた。佐藤龍世、超速のデビュー戦。満塁から同点犠飛を打った。8回には右翼線への二塁打で、反撃の口火を切った。魅力的なパンチ力。そして自分では「内野はショート以外は守れるので、使い勝手の良さがあります」というのが強み。9回には背面キャッチから振り向きざまのダイレクト送球で、来日初登板のウォルターズの大ピンチを救った。
見せ場はいくつもつくったが、ここでは佐藤の隠れたストロングポイントを書く。3回、2死一、三塁。オリックス・東の低めへのスライダーを見極めた。積極的に打ちにいきながら、バットが止まる。これが佐藤の特長であり、デビュー戦で証明した。
通算100四球。902打席目での到達だった。中日の選手と比較する。打席が近い村松(860)なら四球は52。四球が近い上林(113)なら打席は2201。佐藤の奪四球力がいかに優れているかを数字は語る。打率2割6分3厘だった2年前は、42四球を選び、出塁率は3割9分もあった。2割4分4厘だった昨季は3割3分。今季の3割2分4厘、4割2厘は、いずれもイースタン・リーグのトップである。
「うちにないものも持っていると思う。それを持ち込んでくれるという期待」が今回のトレード決断を後押ししたと、井上監督は明かしている。言いたかったのは恐らく違う面だろうが、高い奪四球力も「うちにないもの」で、佐藤が持っているひとつだと、僕は勝手に思っている。
ひと昔前にもてはやされた「マネーボール理論」なら、間違いなく高く評価された才能。いわば掘り出し物が、なぜ2軍でくすぶっていたか。なぜ交換要員もなしで獲得できたのか。その理由は、野球ファンならご承知だろう。攻撃なら2死。打席なら2ストライク。だが信念と覚悟があれば、そこからでも逆転できる。それが野球の醍醐味(だいごみ)だと、彼には実証してもらいたい。

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