’90年代からのヤクルト常勝時代を築いた最強捕手・古田敦也。強肩強打に加え、投手の持ち味を引き出しつつ、打者の狙いを外すリードに他球団はお手上げ状態に。彼のミットに向けて投げた者だけが知る秘密とは。
 発売中のNumber1121号に掲載の[証言構成]古田敦也 石川雅規/館山昌平/ギャオス内藤/岡林洋一「エースが目撃した本当の凄さ」より内容を一部抜粋してお届けします。

一体、古田は何が凄いのか?

 球界最年長投手として2025年シーズンも先発マウンドに立ち続けるヤクルト・石川雅規。地元秋田の実家には、これまで彼が積み上げてきたさまざまな記念ボールが飾られている。その最前列、もっとも目立つ位置に置かれているボールには、石川の自筆でこんな言葉が刻まれている。

「古田さんに初めて受けてもらう!」

 その上には「2002.2.5」とある。石川がプロ入りした’02年、沖縄・浦添キャンプで手にしたボールである。

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「たかがキャンプの、たかがブルペンでの1球かもしれないけど、僕にとってはものすごく意味のある1球でした。それ以降、プロ初勝利、50勝、100勝と節目のボールはたくさんあるけど、これは僕にとって意味のある一歩目のボール。すごく大切に思えたから、そのまま持って帰って今でも実家に飾っているんです」

 今年でプロ24年目、約四半世紀にわたる現役生活の第一歩となる「たかが1球」を、今でも大切に保管するほど、石川にとって古田敦也の存在は大きい。一体、古田は何が凄いのか?

相手バッターは「古田と勝負している」感覚

「バッターだけでなく、ランナーや相手ベンチの動きなど、“一体、いくつ目があるんだろう?”というほど観察力と洞察力に優れ、まるで球場全体を見渡していたイメージです。そして、“あの場面のあのボールはこうだった”と記憶力もいい。相手バッターは、僕とではなく、古田さんと勝負している。そんな感覚でした」

 観察力、洞察力、記憶力――。いずれも、野村克也が「名捕手の条件」として挙げていたものである。それに加えて、「古田さんは、いつもいいタイミングで、いいアドバイスをくれるんです」と石川は言う。

「毎年、シーズンオフが近づくと、“こんなボールがあったらいいな”ってボソッと言うんです。そのひと言があるから新しい球種を投げられるよう、オフの間にめちゃくちゃ練習するんです」

 新人王を獲得した1年目のオフには「右打者にファウルを打たせるために」カットボールをマスターした。現在のウイニングショットである速いシンカーも、古田のひと言がきっかけとなって習得した。さらに、石川に多くの白星をもたらしたのが、プロ6年目にマスターしたシュートだ。

「古田さんの現役最終年となった’07年。開幕からずっと勝てない日が続きました。それまでもずっと“シュートをマスターしたらどうだ?”と言われていたけど、なかなか覚えることができなかった。でも、この年のシーズン中盤にようやく納得いくシュートを投げられるようになりました」

 ’07年中盤以降、石川は2回の完封劇を演じて復活への手応えをつかんだ。その結果、翌’08年には12勝を記録した。

「このときにはもう古田さんはユニフォームを脱いでいたけど、’08年に勝つことができたのは間違いなくその前年にマスターしたシュートのおかげでした」

館山が明かす古田のアドバイス

 古田が口にした「こんなボールがあったらいいな」という言葉を、館山昌平も記憶している。「左の石川、右の館山」と称され、長年にわたってヤクルト投手陣を支えた館山が、古田とのやり取りを振り返る。

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